税制改正のゆくえ

今年度の税制改正は、法人税の実効税率引き下げが大きなテーマとなっています。単純に実効税率を下げると税収が不足するため、様々な見直しが検討されています。これまで政府税制調査会において下記の事項が検討されていましたが、現状の報道をみる限り、財源としての増税策は、繰越欠損金の控除限度額の縮小外形標準課税の課税強化租税特別措置法による各種優遇税制の縮小が最も可能性が高いと思われます。

税収の自然増を財源とすべき、との意見もまだ根強くあり、実際、平成26年6月8日付日本経済新聞において13年度の納税額が最大1兆円上振れするとの報道がされています。ただ、実効税率を20%台とするためには、最低3兆円の財源が必要となり、やはり自然増のみでは、財源が足りないこととなります。

平成26年6月13日、骨太の方針の素案において、法人税実効税率を2015年から数年間で20%台に下げることを明言しましたが、その財源や具体的なスケジュール(何年で具体的に実効税率を何パーセントまで下げるのか)については、結局年末まで議論が持ち越されることとなるようです。

検討項目

 現行改正案
中小企業の軽減税率 資本金1億円以下(大企業の子会社除く)の中小企業について年間800万円以下の所得の法人税率を15%に軽減(本来は25.5%) ・軽減税率を廃止して本則の19%とする
・資本金での判定ではなく、所得額等他の基準による判定とする
研究開発減税 研究開発費用の最大10%(大企業の場合)相当の法人税を軽減

縮小して恒久化
・総額型の税額控除額を縮小(8~10%→6~8%へ)

・増加型の税額控除については控除割合を拡大(現行5%~30%)

繰越欠損金 大企業については繰越限度額を8割に制限 大企業の控除限度額について8割→6割へ縮減、その代り繰越期間を9年→12年に拡大(現状中小企業の負担増は避けられる見通し)
減価償却制度 定率法、定額法いずれかの方式を選択可能 原則定額法とする
外形標準課税 資本金1億円超の企業について付加価値や資本金に応じて事業税を課税 資本金1億円超の企業について外形標準課税の課税を強化(現状中小企業の負担増は避けられる見通し)
配偶者控除 原則収入103万までであれば配偶者控除(38万)が適用となる 廃止を検討(世帯全体の控除額を76万円とする)

いずれも、実務には非常に影響が大きいところです。特に、減価償却については、初年度の償却額について定率法と定額法では相当に金額の開きがあります。

例;耐用年数6年の自動車(取得価額200万円、期首取得の場合)

定額法・・・200万円×0.167=33.4万円

定率法・・・200万円×0.333=66.6万円

また、中小企業について外形標準課税の対象が拡がる可能性があり、赤字であっても均等割(最低年額7万円)以外の追加負担が生じることになります(※ただし、最新の報道では中小企業の負担増は避けられる見通しです)。

例;東京都、資本金1千万円の場合

事業税資本割=1千万円×0.21%=21,000円

事業税付加価値割=給与、支払家賃、支払利子の総額×0.54%

今後も議論の行方をしっかりと見守っていく必要があります。

※6/22 報道によれば、パチンコに対する課税も財源として検討されているようです
※7/29 報道によれば、携帯電話税や内部留保税、銀行税なども与党内で議論があった模様です

※全国平均と比較して税率が高く設定されている東京都(実効税率35.64%)に対して税率引き下げの要請があったようです。

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