組織再編の否認事例(塩野義製薬)

平成26年9月13日付日経新聞において、塩野義製薬が大阪国税局から約400億円の申告漏れの指摘を受けたとの報道がありました。

ヤフーやIBMなど、組織再編に関する大型の否認事案の判決が記憶に新しいところですが、またひとつ、大きな事案が発生してしまいました。

今回の事案は、海外子会社に対する現物出資について、当初税制適格要件を満たすものとして簿価で移転したものとして処理していたところ、これを否認された、というものです。

現物出資の場合の税制適格要件

現物出資とは、現金ではなく、株式や土地などの現物の資産をもって出資する行為をいいます。ただし税務上は基本的にこう考えます。

「出資側でいったん売却して、現金に換えたうえで、出資先に出資する。出資先はその現金相当で資産を取得した」

ずいぶん回りくどい説明になってしまいましたが、要は、出資側で時価で売却したものとみなすので、売却損益が発生します。

しかし、グループ内の再編などの場合には、売却損益を発生させず、簿価のまま、売却損益を生じさせない取扱いがされます。いわゆる「税制適格要件」を満たせば、売却損益は生じません。

今回、塩野義製薬が現物出資を行った英国子会社は、塩野義製薬の100%子会社である旨が有価証券報告書に記載されています。100%子会社への現物出資の場合は、ほとんど無条件(100%出資関係の継続のみ)で税制適格になります。

ただし、子会社は外国に所在する「外国法人」となるため、国内にある資産(不動産や採石権など国内で管理されているもの)を現物出資した場合は、適格要件を満たさないこととされます。

今回の事案について

ただし、さらにややこしいのは、国内の資産であっても、25%以上を保有する外国法人の株式については、国内で管理されているとしても、適格要件を満たすこととされています。JVの持ち分が法人の株式とみなされれば、適格要件を満たすと思われますが、法人には該当しないという見方もあります。今回、その点が争点になったかどうかは不明です。

新聞報道によれば、「海外同士の資産移転などの一定条件を満たせば簿価で譲渡したものとして算定できる」と認識されていたようです。新聞報道のみでは詳細はわかりませんが、現物出資の対象であったJVの持ち分が国内の資産に該当するのか否か、という点が争点になったのでしょう。この点、会社側は事前に当局に相談をしていたように思われますが、残念ながら否認に至ったようです。

子会社が持ち分を共同事業者に対し売却していた事実や、簿価と時価の差額が400億円と多額になった点から、国税側も課税ありきとなったものと推測されます。

本件、詳細が分かり次第、またレポートいたします。

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