粉飾決算とは(その2)

粉飾決算その2(売上の架空計上)

 また粉飾決算の続きです(※決して粉飾決算をおすすめしているわけではありませんので、誤解ないようお願いします)。

前回、典型的な手法としての在庫の過大計上をご紹介しましたが、今回は「架空売り上げの計上」です。たまに新聞でみかける循環取引も同じ範疇ですが少し複雑なので、単純な架空売り上げをご紹介します。

簡単に実行可能だけれど・・・

在庫の架空計上も仕訳一本で実行可能ですが、売上の架空計上も同じです。

売掛金 100 / 売上高 100

の仕訳を一本追加するだけです。実に簡単です。しかし、ここに複式簿記の罠が潜んでいるのです。

在庫の場合は、期末在庫が自動的に翌期首へ繰り越しされるとご紹介しましたが、架空売上計上の場合はどうなるでしょうか?

売上については、その期限りとなるのですが、そのしわ寄せが貸借対照表に表れてきてしまいます。

・売上高 → 損益計算書に記載される → 損益計算書の場合、翌期繰り越しされないため、翌期まで引きずらない

・売掛金 → 貸借対照表に記載される → 翌期以降、実際に入金になれば、貸借対照表から消える(=入金がない限りはずっと残り続ける)

つまり、架空に計上された売上は損益計算書に記載され、利益となりますが、同時に「売掛金」が貸借対照表に記載され、実際に入金等されるまで、ずっと記載され続けます。

単純に売掛金が消せるかというと、複式簿記の原理から、すべて「損失」になってしまい、結局売上を計上した意味がなくなってしまうのです。

架空売り上げをどのように解消するのか

結局、貸借対照表に残り続ける売掛金の処理に困ることになります。解消方法は主に以下3つです。

・翌期の売上を「売上」とせず、前期計上した売掛金の入金があったものとして処理する

 →この場合、翌期の売上が本来よりも低くなるため、利益が減少してしまいます。

・売掛金をいったん費用に振り替える

 →上記同様、余計な費用が計上され、利益が減少してしまいます。

・そのまま計上しておく

 →翌期の利益は減少しないですが、実態のない売掛金が貸借対照表に残り続けます。何らかの処理をしない限りは貸借対照表に残り続けます。税務申告書に添付する勘定科目内訳書を連年で比較すると、売掛金が残り続けていることが明白になり、金融機関などは粉飾決算を行った事実を簡単に把握してしまいます。

やはり抜け出すのが難しい粉飾決算

いったん架空売り上げを計上してしまうと、上記のとおり解消が非常に難しくなります。もちろん、売上が急激に回復すれば、ある程度飲み込むことは可能です。

例; 平成25年売上 1000  平成26年売上 900 平成27年売上 ?

仮に平成26年に前年からの売上減少分100を補うため粉飾決算したとします。この粉飾を飲み込み、さらに売り上げを平成25年並みとするためには、平成27年の売上はいくらあればよいでしょうか?

答えはもちろん、1,100です。
平成25年に比べれば100の増加(10%増し)なので大したことはないと思うかもしれません。しかし、平成26年に100売上が落ち込んでおり、そのような状況で平成26年に比べて売り上げを122%(900→1100)伸ばす必要があるのです。平成27年の売り上げが仮に平成26年並みとすれば、平成27年の売り上げは800まで落ち込み(平成26年の粉飾100を飲み込む前提)、結果的に、また架空売り上げ200を計上してしまうことになるのです。

一度実行してしまうと抜け出すのが非常に難しくなります。

 

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