会計で未来を変える!コラム⑥3つの決算書—銀行用の決算書
2つ目の決算書は「銀行用の決算書」です。
税務申告用の決算とは目的が正反対
税金を減らすためには、利益をなるべく少なくする必要があります。儲かっていて、借入が必要ない中小企業は、税金を減らすことがメインテーマとなるため、なるべく経費を前倒し計上して、利益を少なくしようとするインセンティブが働きます。
一方で、事業がうまくいかなくなると、資金が足りなくなるため、銀行借り入れが必要になりますが、銀行は赤字の会社にはなかなか貸付をしてくれないため、借入が必要な会社は、なるべく利益が多くなるように決算書の見栄えをよくすることを考えます。
利益を増大するには?
利益を増大するには、①売り上げを増やすか、あるいは②経費を減らすか、のどちらかとなります。
①売り上げを増やす
売り上げを増やすといっても、急に販売先が見つかるわけではありません。実際はともかく、会計上は販売したこととして処理するのです。
売掛金 100 / 売上 100
と仕訳するだけで売上が増加し、利益が増大します。
ところが、実際売上があるわけではないので、いつまでたっても資金が回収できず、売掛金100が貸借対照表に残ったままとなります。銀行対策用に売上を増やしてしまった場合、回収できない売掛金がいつまでも残ることになります。
②経費を減らす
経費を減らすには、本来認識すべき経費を認識しないこと、あるいは資産に計上する方法があります。
本来支払うべき経費を未払認識しなかった場合、当期の費用は少なくなりますが、後日支払ったときに費用が計上されるので、将来の利益が減少してしまいます。
また、本来費用で計上すべき支払を「資産」に計上してしまうことで、当期の費用は少なくなりますが、換金価値のない資産が貸借対照表に計上されることになり、不良資産としていつまでも貸借対照表に残ることになります。
利益調整を見破るのは簡単!
銀行対策用の決算書は、損益計算書の数字はよいとしても、そのつけが必ず貸借対照表にしわ寄せされます。貸借対照表の残高の推移を把握することで、粉飾決算が行われているかどうかは比較的簡単に把握することができます。複式簿記は世界三大発明、とも言われています。事実と異なる記録をしようとすると、そのしわ寄せが必ずどこかで生じてしまうのが複式簿記の特徴です。
やはり、銀行対策用に決算書を小細工することは何の解決策にもならないということです。本業をしっかり伸ばすことが結局は事業成功のための近道といえます。